木彫りの狗児(木彫りの子犬)

木彫りの狗児きぼりのくじ

  • 種別:重要文化財
  • 時代:鎌倉時代
  • 備考:湛慶作

明恵上人遺愛の彫刻です。

明恵

承安3年(1173)に生まれる。現在の和歌山県有田川町、湯浅氏の出身。華厳宗の中興の祖。神護寺の文覚について出家する。東大寺で華厳を学び、勧修寺の興然から密教の伝授を受けた。建永元年(1206)後鳥羽院より栂尾の地を賜り、高山寺を創建して華厳宗興隆の中心道場とした。寛喜4年(1232)に没する。

上人

学徳を備えた僧侶の敬称。

明恵上人が動物を慈しんだことは伝記に多く語られています。幼いころ、小動物を見かけるたびに亡き両親の生まれ変わりではないかと思い、子犬を跨いでしまったあとには立ち返って拝んだという逸話も残ります。動物の中でもとくに子犬を愛し、自著『夢記』にもしばしば子犬の夢が現れます。

『夢記』

明恵上人の自筆による19歳から58歳までの約40年間にわたる夢の記録。高山寺所有分は重要文化財に指定されている。

この愛らしい実寸大の子犬の木彫りは、常に明恵上人の傍らに置かれ大切にされたといわれています。鎌倉時代慶派仏師・湛慶の作と伝わります。

鎌倉時代

源頼朝が鎌倉に幕府を開いてから、元弘3年(1333)北条高時の滅亡に至るまで約150年間の称。

慶派

平安時代後期から江戸時代に至る奈良仏師の一派。各時代で名工を輩出している。

湛慶

鎌倉時代の慶派の仏師。運慶の長男。明恵上人との交流が知られている。代表作として蓮華王院の中尊「千手観音坐像」(国宝)など。(1173〜1256)